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英文修正 人生の後半を生きる

心の若さは気の持ちようであり、それは必ず表に現われます。つまり、つねに前へ進む気力さえ失わなければ、若さはいつも向こうからついてくる、というのが私の信念です。
そのよい例が芸術家です。八十歳、九十歳でなお毎日制作に励み、工夫を凝らし第一線に立つ。そういう気迫を失わない方が少なくありません。それらの方がたは、組織の上に乗っている経営者とちがって、定年もなければ引退もありません。生きているかぎり、自分との戦いが続きます。その緊張感が若さを保ち、エネルギーを生むのだと思います。
私は、数え年の八十歳を機に会長を退任し、相談役になりました。松下電器創業五十五周年にも当たり、一つの区切りをつけてよい時期だと思ったからです。しかし、これは会長という一つの役職からの退任であって、人生から引退したつもりは毛頭ありません。いや、むしろ引退してはいけないと思っているのです。

出典:『経営のコツここなりと気づいた価値は百万両』

 

これは、松下幸之助八十五歳の時の著書の一節です。他人に語りかけているだけでなく、自分自身に対しても言い聞かせているように感じられます。
この十五年前、まだ七十歳になったばかりのころのこと。幸之助は変わらず一心に経営に取り組んでいたものの、年齢を重ねるにしたがい、ときに肉体に衰えを覚え、気分的にも老いを感じるようになっていました。
そうした気分に対し幸之助は、〝人間である以上、一年一年、年齢が増えていくことは避けられないし、肉体的に衰えていくこともやむを得ない。けれども、いくら年をとっても精神面では若さを失わないで生きることができるはずだ。またそうでなければならない〟と考えるようにしていました。そんな折、誕生日のお祝いとして、アメリカの実業家であり作詩家のサミュエル・ウルマンの「青春」と題した詩を贈られ、深い感銘を受けます。
この詩は、連合国軍最高司令官のマッカーサー元帥が座右の銘とし、常に執務室に飾っていたそうです。それをある日本人が翻訳したことをきっかけに広く知られるようになったもので、「青春とは人生のある期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ」と始まります。ともすると、お互い年老いたからできないなどと口にしがちですが、若いのに覇気がなく、むしろ元気なお年寄りより老いているのではないかと思える人もいます。まさに心のあり方こそが大切だといえるでしょう。さらに「人は信念と共に若く 疑惑と共に老ゆる、人は自信と共に若く 恐怖と共に老ゆる、希望ある限り若く 失望と共に老い朽ちる」とあります。信念を失うことなく、自信に溢れ、希望をもって果敢に物事に挑戦する。たしかにそういう人こそ青春を生きているといえるでしょう。私たちを力強く叱咤激励してくれる言葉です。
幸之助は、この詩を自分自身が覚えやすいように次のように要約し、みずからの座右の銘としました。

青春とは心の若さである
信念と希望にあふれ、勇気にみちて日に新たな活動を続けるかぎり
青春は永遠にその人のものである

晩年になってなお、仕事はもとより日本国際賞等数々の社会活動にも果敢に取り組んだ幸之助。言葉通り、生涯青春を生き続けたのではないでしょうか。

 

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