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英文修正 人生の後半を生きる

夫婦というものを、これだけ長くつづけてきますと、時に「夫婦にとって大事なことは何でしょうか」とたずねられることがあります。ぼくは、それに答えるに、ふさわしい人間かどうかはわかりませんが、しかしぼくなりに、これだけは大事だと思うことが一つあります。
それは、奥さんというのは、しかるべくご主人をほめるというか、その長所をよく認め、素直にそれを伝えてあげるということが大事なように思うのです。もちろん、あまりほめすぎて、うぬぼれさせたり、あるいは奥さんは非常にほめているが、他人は笑っているというようなことでは困りますが、やはりご主人に対しては、適当に賛辞を呈するというか、ほめることが必要だと思うのです。
また、ご主人の方もある程度、奥さんをほめる。ぼくは、ほめるということは、いたわりであり、お互い人間同士をしっかりと結びつける一つの大切な絆ではないかと思うのです。

出典:「折々の記」『PHP』(昭和54年10月号)

松下幸之助は、「折々の記」と題して、日々の暮らしの中で感じたことを月刊誌『PHP』に連載していました。これはその昭和五十四年十月号(当時83歳)に掲載された一文です。
幸之助はさらに続けて、これまでたくさんの夫婦をみてきたが、うまくいっていない夫婦は、どうもあまりほめあっていないように思える。また反対にうまくいっている夫婦は、ごく自然にお互いにほめあっている。やはり男性も女性も、他人からほめられるのもいいが、奥さんやご主人からほめられれば一層うれしいのではないか。自分自身、奥さんから「あなた、うまいこと考えましたね」などと言われるとうれしくなり、反対にあまりほめてくれないと何となく物足りない気持ちになったりする、と述べています。
さて、日本の離婚率を調べてみると、戦後、一貫して増加傾向にあり、平成十四年をピークに減少に転じ、平成二十三年には1.86パーセントとなっています。これは欧米と比べれば低いものの、日本の戦後の推移の中ではまだ高い水準にあるといえます。もちろん、増加するにも、減少するのにもさまざまな原因が絡み合っており、安易にその是非、多い少ないと論じることはできません。ただ、成田離婚、熟年離婚、あるいはバツイチなどという言葉が流行するほど、離婚がそれほど珍しくないものになっているのは事実でしょう。そうした変化につれて、一人親家庭が増え、子育てや経済的自立ができないなど、徐々に社会問題化しつつあることも見逃せません。
必ずしも離婚が否定されるべきものではないにしても、家族の絆の大切さが注目される昨今、やはり子どものためにも、お互いの幸せのためにも離婚しないにこしたことはないように思えます。そこで大切にしたいのがやはり夫婦のコミュニケーション。どんなに長く連れ添っていても人の気持ちはそうそうわかりません。意識してコミュニケーションをとることが必要なのではないでしょうか。
もちろん上っ面だけのコミュニケーションでは意味がありません。心を添えた言葉とともに態度で気持ちを示すことがとても大切です。たとえば、いまさら照れくさいという方もあるかもしれませんが、幸之助がいうようにほめたりするのはきわめて有効な方法です。結局、夫婦にとっていちばん大事なことは、お互いに言葉や態度でいたわりあうことではないか、そう幸之助は言うのです。

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