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英文修正 人生の後半を生きる

 

わたしにしてもあなたにしても、この世でいちばんかわいいのは自分です。自分をいちばんだいじにする。そうであっていいし、そうでなければなりません。自分が失敗した場合でも、ほんとうに自分を慰めるのは自分です。そうして自分をだめにしないようにすることが、同時に社会への責任でもあるのです。
しかし、自分をしあわせにするには、自分のまわりの人もしあわせでなければなりません。不幸にかこまれたなかで、自分だけ幸福な気分にひたっているということは不可能です。あなたのためにも、あなたの家族、あなたのグループをかわいがらねばならない。
こうして、自分を愛する心が深ければ深いほど、他に及ぼす愛の心も強まるべきものです。逆にいえば、家族を愛し、近所のひとを愛し、地域社会を愛し、国をほんとうに愛するひとが、真の意味の自分を愛するひとだとわたしは思います。

出典:『若さに贈る』

 

「自分が大事」などというと、利己的なイメージが感じられるためか、どうもいけないことのように思われがちです。しかし、自分のことをよくわかっているのは自分自身です。その自分以外に誰が自分のことを理解し、大事にすることができるでしょうか。
もちろん自分を顧みず、他人のために尽くすのはたいへん尊いことです。たとえば、親が自分を犠牲にしてまで子どものために尽くす無私の愛は、私たちの心に深い感銘を与えます。とはいえ、自分の力で生活の糧を得、心身の健康にも配慮しつつ自立した社会生活を送ることができていなければ、他人の世話をすることはできません。自立できていない人が社会に尽くそうとしても、ときにはかえって他人や社会の負担になりかねないでしょう。やはりまずは自分のことを一番に考え、しっかりと自立することが大切だといえます。
しかし、お互いにつながりあい支えあって成り立っているのがこの世の中です。自分の生活は必ず周囲の人の生活と結びついており、自分の幸せも、周囲の人の幸せと切り離して考えることは決してできません。
たとえば、家族同士で優しい言葉をかけ気遣いをしあう。些細なことですが、一家団欒、みんなが笑顔になれば、自分もおのずと幸せな気分になってきます。あるいは、困っている人がいれば、できる範囲で大いに手助けする。それが電車やバスで座席を譲るという些細なことでも、それぞれの心に温もりがわきあがるはずです。地域社会の人々のために自分にできることもあるでしょう。人によっては、国家のさらなる繁栄のために尽くせる立場にある人もいるかもしれません。やはり好ましい国家であってこそ、そこに生活する私たちの幸せも守られます。自分を愛するように人を愛し、地域社会、国を愛し、みずからなすべきことをなしていくことが大切なのです。
このように見てくると、自分を大事にしようとすればするほどに、家族や友人をはじめとした身近な人から、地域社会、国家、さらには世界のすべての人々を大事にしなければならないということになります。松下幸之助は「一人だけの幸福はない」と訴え、少しでも周囲の人々が豊かに、幸せになれるよう力を尽くしました。
七十一歳の幸之助が昭和四十一年に著した『若さに贈る』の一文ですが、みんなが幸せになるためのヒントがここにあるのではないでしょうか。

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