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英文修正 人生の後半を生きる

 

健康法としては何もやっていません。生活態度ももうきわめて平凡ですよ。最近は具体的にいうと、一汁三菜ぐらいでしょうか。聞いてみますと、“小食”、これがやっぱり長寿の秘訣だそうですね。それがつい料理屋に行くと山海の珍味というとたいそうですけど、七つ八つ出ましょう。それは食べないように気をつけているんです。うちでは一汁三菜ということにしているんです。
 うちの家内はまた大食いですのや。(笑)同じ一汁三菜でも、大きいんです、ひと切れが。(笑)みな、魚でも。いつも喧嘩するんですよ。食べきれるようにしてくれと。「そんなら余しなさい」とこう言いますねんな。けど、余すとなんやしらん、こうもったいないでしょう。食べきったほうが心持ちいいから小さくしてくれ、あんたのほうは三倍にしなさい、私のほうは小さくと。(笑)それでいつもやりあいやるんです。(笑)結局、長生きの秘訣は私は知りませんが、ものを食わない、というとおかしいけども小食がいいらしいですね。

出典:第八回生産性労働問題懇談会(昭和四十六年三月十六日)

 

 

晩年、しばしば松下幸之助は、長生きの秘訣を尋ねられました。生来、蒲柳の質で、しかも若い頃に肺を患い、二、三日仕事をしては、一日寝込むというような生活をしていた幸之助にしてみれば、自分が長生きの秘訣を尋ねられるようになるなどとは思いもしなかったことでしょう。
一般的に長生きの秘訣とされていることは、第一に油や塩分少な目の健康的な食事、第二に適度な運動と睡眠、第三に趣味などの楽しみを持つ、第四に大らかな気持でストレスなく人と積極的にかかわるなどがあげられます。
ところが幸之助は、あるときに次のように語っています。「これまでの歩みを振り返ってみると、私は一つの仕事が成就すると、またすぐ次の仕事というように、たえず目標をもって努めてきました。そのくり返しの中に張り合いというものがあり、いわば死ぬに死ねないとでもいうべき、一種の緊張感がみなぎっていた。そこに生きる張り合いを感じて、毎日を過ごしてきたように思う」
要はたえず目標を掲げ、それに向かって真剣に、精一杯取り組むことが長生きにつながったのではないかというわけです。またそれに続けて、九十歳を機に、長寿の記録を更新し、百三十歳を目指したいと宣言してもいます。
また次のようなこともありました。幸之助が、恒例の叙勲で勲一等旭日大綬章を受けることが、政府から発表されました。これは「多年にわたり電機工業に携わり、業界の発展、電気機器の普及に尽力した」功績によるもので、幸之助自身すでに昭和四十年に勲二等旭日重光章、昭和四十五年に勲一等瑞宝章を受けており、さらに民間人として最高位の叙勲を受けることになったわけです。この喜びを幸之助は「数えで米寿の年に大変光栄です。長生きしてもっとやれということだと素直に受けとめ、百六十の天寿にむけもう一度やり直したい。毎日仕事のことを考えることがその長生きの秘訣ですが、今後はより人生を楽しみたい」と語っています。もっと世のため人のためになる仕事をしよう、加えて百六十歳まで生きようというのです。何とも大きな目標であり、それに向かって邁進しようという強い意志がみなぎるコメントです。
掲載した話は、幸之助七十六歳、昭和四十六年三月に行われた講演会での質疑応答の一節です。ユーモアを交えた受け答えで、こうしたゆとりのある心も長寿の秘訣かもしれません。

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