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英文修正 人生の後半を生きる

 

 結婚式というものは、一晩で終わってしまいますが、結婚は十年、二十年、三十年かかって築きあげる大きな殿堂であります。夫婦のあり方は、お互いに約束をしたその日だけで決まるというものではなく、死ぬまで努力して、一歩一歩つくられていくものであります。したがって、夫婦ほど“信解”が伸びる機会に恵まれた仲はないでしょう。お互いによく理解しあう、長所も短所も知りあう、そうしてお互いに誠意を信じて、いたわりあう姿があってこそ、よい夫婦であったといえると思います。
 愛するといっても、動物的な愛だけでは、よい夫婦にはなれないと思います。信というものと一つになる愛がなければなりませんが、これは一晩では達成できないのでありまして、何十年もかかることでしょうね。またそれだけに理解も深まってくるでしょう。
 今、円満を欠いていましても、この信解両全を念頭におき、工夫を積んでいけば、必ず夫婦のあいだはよくなると思います。

出典:「信と解」(昭和二十四年二月)『松下幸之助発言集37』より

 

昭和五十六年三月十七日のテレビ朝日の人気番組「溝口モーニングショー」で、「奥さんと仲が悪いと事業もつぶれますか」と質問された松下幸之助は、次のように答えています。
「それはまず社員が信用しないですからね。偉そうなこと言ってるけど、夫婦喧嘩してるやないか、とね。やはり社員の信用を得るには夫婦仲です。成功しているところは、みな夫婦仲よくしておられる。私も、新しい取引を始めるときには、その会社の業績より、経営者の夫婦仲を見ますものね。」
夫婦仲が大切というのはわかりますが、それが実際、業績よりも商売に関わるほどのものといえるのかどうか。この点に関して幸之助は、次のようにも述べています。
「ぼくは、その信用の目安を、ご主人の人柄におくだけではなく、そのお店のご主人夫婦の仲がよいかどうか、というところにもおいたのですよ。夫婦仲がよく、二人で気をあわせて仕事を進めているお店、たとえば、ご主人が外をまわれば奥さんが店番をするというようなお店であれば、それは信用のおける店だと判断するわけですな。そのようなお店なら、まず取り引きをしても大丈夫だろうと考えて商売を進めたわけです。実際、夫婦仲がよいお店は倒産することがなかった。そのおかげで、同業者が倒産する中でぼくの会社は順調に発展しつづけることができたのです。夫婦仲ということを、信用をはかるバロメーターと考えたことは必ずしも間違っていなかったと思いますね。」
それでは、夫婦仲がよいとはどういうことでしょう。お互いに信じあうのはもちろんのことでしょう。嘘をついているのではないかなどと疑いを抱いていては、協力して家庭生活を営むことはできません。とはいえ、ただ信じるだけでも不十分です。やはり相手の思いや考え、立場なりを理解し、それに応じた受け答え、接し方ができてこそ息のあった夫婦ではないでしょうか。つまり、信じるだけでも理解するだけでもだめ、その両面が欠かせないというわけです。もっとも、こうしたことは、そもそも育ち方が異なる二人には一朝一夕には難しい。やはり何年も時間をかけつつ力をあわせて築き上げていくものに違いありません。
上掲のことばは、昭和二十四年二月に開催されたPHP定例研究講座での質疑応答で述べられた一節です。当時幸之助は五十四歳、長年の商売を通じ、夫婦仲には信と解の両面が大切だと実感していたのでしょう。

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