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英文修正 人生の後半を生きる

僕の知っている人にね、僕らと同い年の人ですが、前ね、大学の先生していたんですよ。その人が十年ほど前にね、もうそうやから七十二、三歳のときでんな。奥さんを亡くして、寂しくしていたんですよ。そしたらね、どういう縁があったんか、適当な相手を見つけてね、結婚したんですよ。それからもう俄然元気になって、それで非常に幸せを感じているんですな。それでその、もう十年近くきて、非常に円満にやっているんです。うらやましいぐらいですわ、仲良うて。子どもがね、孫を持ってる人もあるんですよ、二人ともね。それはそんでよろしいですからな。
 やっぱりね、男性でも女性でも伴侶がいりますな、ほんとうは。年がいけばいくほどそういう心の友が欲しいんやないでしょうか。適当な相手がなかったら仕方ないですけどな、適当な相手というものがある限りはね。僕は幸いにして、まだ家内も達者ですからな、もう六十年連れ添うたんですよ。結婚して六十年。

出典:「いつまでも恋心は大切」『女性自身』(昭和51年7月3日)

 

多くの人にとって、一人ぼっちでいることはつらく悲しいことだといえます。友人や仲間、場合によっては喧嘩相手でもいいから、自分の相手をしてくれる人が欲しい。それが人情というものではないでしょうか。
たとえば、旧約聖書の創世記の中で、最初の人間であるアダムを造った神は、「人が、一人でいるのは良くない。わたしは彼のために、彼にふさわしい助け手を造ろう」といって、イブを造っています。つまり、歴史的にたいへん古い書物の中でも、人が一人でいるのは好ましくないとされているのです。
またラットを使った実験で、一匹だけ群れから引き離して孤独な環境のもとで飼育すると、そのラットは数週間で神経質な反応を示し、かみつくなど手に負えない状態になってしまうそうです。これは、仲間と引き離され一人ぼっちの状況に置かれることが、精神的不安定さを招く要因になるという一つの証拠といえるでしょう。
もちろん、こうしたことはラットに限ったことではありません。ヨットによる太平洋単独横断を成功させた堀江謙一氏の手記には、何より苦しかったのは孤独に耐えることだったとあります。そして孤独に耐えるために、泣き言をいう自分と励ます自分というように、もう一人の自分を頭の中につくりあげ、対話をしていたそうです。
松下幸之助も次のように記しています。 「今ほど素直な心の大事なときはない。あなたがあっての私であり、私があってのあなたなのである。素直な心はそこの道理に眼をひらかせてくれるのだが、それでもなお人は、私だけがあればよいと思いがちで、だから知らず知らずの孤独のなかで、次第にほほえみを失っていく」
ともすると私たちは、他の人との関わりを煩わしく思うことがあります。でも、お互いがいて、はじめて物質的にも精神的にも助け合って生きていけるのです。もし自分は一人だけでも生きていけると引きこもってしまっては、幸之助のいうようにほほえむことができなくなってしまうにちがいありません。
ともに笑い、喜び合える気の置けない仲間や友人は、たやすくできるものではありません。そうした仲間や友人はもちろん大事にすべきです。しかしもっと大切なのは、身近で長年連れ添っている伴侶です。いい面も悪い面も知り合った、まさにかけがえのない心通い合うパートナー。お互いの幸せのために、いま一度、その大切さを見直したいものです。

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