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英文修正 人生の後半を生きる

私が80歳になったときに、ある人が〝半寿の祝い〟というのをくれたんですよ。〝半寿の祝い〟とはどういうことかわからなかったので、くれた人にきいたんです。そうしたらその人が、「古来、中国にそういうことがある。〝天寿〟というと160歳である。それで80歳になったら、ようやく半分に達したから、〝半寿の祝い〟というのを出すのである」と。それで初めて、80歳になったら〝半寿〟という祝いをお互いに取り交わしてもいいということを知ったのであります。
それを知って私は非常に勇気が出て、天寿を全うしてやろうと、こう考えてみたんです。160まで生きることは、まあ、おそらくありえませんけれどね。そやけれども〝天寿を全うする〟という言葉を使う以上は、160歳を目標にしてやらなきゃいかん。
ということで、今、天寿を全うする闘争を開始してるんですよ(笑)。160まで生きんならん。ずいぶんありますからな、楽しいな、とこう思っているんですよ。もう3回ぐらい結婚し直さないとあかん(笑)。

出典:「日本経営者団体連盟創立30周年・日経連タイムス1500号記念講演会」(昭和五十三年六月二十三日)『松下幸之助発言集5』

 

厚生労働省の2010年7月の発表によると、日本人の平均寿命は男性が79.59歳、女性が86.44歳となり、男女とも過去最高を記録したそうです。まさに日本は世界有数の長寿国。何はともあれ平均寿命が延びるのはありがたいことです。
しかし、私たち人間はそもそもいったい何歳まで生きることができるのでしょうか。これには120歳とも150歳とも、実にさまざまな説があり、はっきりしたことはわかっていません。しかし、老化に関する医学研究の著しい発展を考えると、今後もますます寿命は延びて、大きな病気や事故さえなければ、かなり長い間、生き続けることが可能になりそうです。あながち中国の話にある160歳というのも夢物語ではないのかもしれません。
松下幸之助は、生来蒲柳の質で、しかも20歳のころ肺を患うなど、自分自身あまり長くは生きられまいと考えていました。それが不思議なことに、60歳を過ぎ、70歳を過ぎても生きている。みずから驚くとともに、これも天命、何か大きな力が働いているとし、生きられるだけ生きてやろうと考えるようになります。そしてこの話にあるように、中国で天寿とされる160歳まで頑張って生きてみようと決心するわけです。幸之助は言っています。 「天寿に達するその瞬間まで、そこに自分を生かすというか、全精神を打ち込んでいくところに、人間としての真の尊さがあるのではないか。すなわち、一切のものに寿命があるということを承認したうえで、自分のすべてを打ち込んでいく。そういう姿から、大きな安心感というか、おおらかで淡々とした人生がひらけてくるのではないか。」
また幸之助は、19世紀の1894年に生まれ、激動の20世紀を生き抜き、ついには21世紀も間近というところまできていました。そこで、三世紀にわたって生きることができれば、この日本あるいは世界のためにもっとたくさんの仕事を成し遂げられると、21世紀まで生きることを目標に掲げたりもしていました。
いつまで生きることができるか、それは天が定めるところで誰にもわかりません。しかし、天寿というものがあるとするならば、それを全うする最後の1分1秒まで、楽しく、生き生きと生きることができるよう努力することが、お互いにとってきわめて大切なことではないでしょうか。

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