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英文修正 人生の後半を生きる

 航海術の進歩にしても船の改良にしても、どうすれば自然の理法にそむくことなく、より安全な航海ができるか、という観点を基本に進められてきているように思うのですが、このことは、お互いの人生航路においても、同様に大切なのではないかと思います。
 それでは、人生の中で自然の理に従うとはどのようなことでしょうか。それは、とりたててむずかしいことではなく、雨が降れば傘をさす、そうすればぬれないですむ、というような、いわば万人の常識、ごく平凡なことだと思います。たとえば、病気で熱が出れば無理をせずしばらく休養する。何かでお世話になった人にはていねいにお礼を言う。このようなごくあたりまえのことが人生航路における自然の理法で、これらを着実に実践できるならば、からだも健康体になるでしょうし、人間関係も、商売もうまくいくのではないでしょうか。自然の理法に従っていけば、あらゆることがらが、もともとうまくいくようになっていると思うのです。

出典:『人生心得帖』

 

あれこれ知恵を絞り、努力に努力を重ね、それでもなかなか思うようにいかないことが多い人生。〝そもそも人生とは思いどおりにならないものなのだ〟と諦めている人が少なくないかもしれません。ところが松下幸之助は、決してそうではないと言います。たとえば経営、商売について、「千円で仕入れたものはその品物の性質なりそのときの情勢に応じて、適正利益を加味した千百円なり千二百円で売る。また、売ったものの代金はきちんと必ず集金する。あるいは、売れないときは無理をせず一休みをする。そして、また売れるようになれば懸命につくる。そういう当たり前のこと、平凡なことを着実に力強く実践していくなら、商売なり経営というものは、もともとうまくいくようになっている。ぼくはそう思うのです」と述べています。
そうは言っても、お互いの現実の姿を顧みて、〝当たり前のことを当たり前にやるだけですべてうまくいくなら苦労はない、どんなに努力しても不可能なことはある〟という方もおられるでしょう。幸之助は言います。
「確かに人間には不可能なことがいろいろあります。不可能とはどういうことかというと、いわゆる自然の理に反することが不可能だということです。たとえば、人間は必ず歳をとっていく、それは自然の理です。ですから、その理に反して歳をとりたくないと願ったところで、それは絶対に不可能です。けれどもこれは、逆にいえば、自然の理にかなったことであれば、すべて可能であるということでしょう。つまり、お互いのからだのことにしても、人間関係や商売など何ごとにおいても、自然の理にかなっていれば必ず事は成るということだと思います。平素からこのことを頭に入れて、私心、私的な感情などにとらわれない素直な心で、何が自然の理にかなうことなのかを見極めつつ行動していけば、どのような困難にぶつかろうとも、おのずから道はひらけてくるのではないでしょうか」
要は、私欲私心にとらわれて、自然の理、道理に反するようなことをするから、うまくいくものでもうまくいかなくなってしまうというわけです。
当たり前のことを当たり前に実行する、自然の理に反することはせず、地道になすべきことをなしていく。そうすれば、概ね商売も人生もうまくいくようになっている。何も思い煩うことはない。心配することはない。松下幸之助のこの力強い言葉は、大いに私たちを励ましてくれます。

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