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最近のようにテンポの速い世の中では、何事でもよほどスピーディーに運ばないことには、うまくゆかない場合が多い。
会社における会議一つにしても、みんなが集まって腰をおろし、お茶を飲んでからおもむろに甲論乙駁ということをやっていたのでは、極端にいえば、結論が出たときにはもう世の中が変わってしまっているということにもなりかねない。だから、立ち話で会議をして即決する。しかもそれでも事態は刻々に変わりつつあるから、その立ち話の会議を情況の変化に応じて何回かくり返す。それぐらいの心構えというものを一面にもつことも大事だと思う。

(「立ち話の会議」『思うまま』)

 

社会の変化が著しい今日、何事もスピード感をもって行うことが求められます。例えば教育の世界も、学ぶこと、身につけなければならないことが多くなるばかり。二歩、三歩と先んじて学ぶことで丁度良くなっているように思えます。学問のみならず、芸術やスポーツの分野ともなればなおさらのことでしょう。早期教育のもとで学び、感性や技術を磨くことが不可欠になりつつある感じがします。

もとより社会と密接にかかわっている会社の仕事であればなおさらです。苦労の末、ようやく開発できた商品であっても、翌日にはもう他社の商品に劣るものになり、なかなか売れなくなってしまうことなど少なくありません。さらに営業現場などで、会社に戻って上司に相談してからお返事いたしますなどという仕事の仕方をしている会社が、生き残れるはずがありません。あたかも自らビジネスチャンスを放棄しているようなもの。それを部下の営業担当者に強制しているような会社自身、存在し続けていくことはできないでしょう。

新製品の開発、低価格化への取り組み、営業先での商談の判断などで当たり前にスピードが要求されるわけですから、それらを決定、方向づける経営判断は、なお一層のスピードが求められるのは当然です。今日はもう遅いから明日にしようなどという悠長なことをしていては競争社会からあっという間に取り残されます。しばしばそうした決定は会議の席上で行われますが、その会議を必要としないもの、短時間ですますことができるものなど、よく見極める必要があります。

役職が上がり、権限が高まるにつれてなぜか会議が増えていきます。中にはこんなに大勢で会議をする必要があるのかというものも少なくありません。

随分以前の話ですが、ピラミッド型の組織は今日の変転極まりない社会では適切ではなく、これからは、社員一人ひとりが高い経営能力と判断力を身につけた鍋蓋型組織になることが求められる、という議論が盛んに行われていました。見回してみると、日本の大企業のみならず中小企業においても、組織は今もってピラミッド型組織のまま。しかも意識しているかどうかわかりませんが、それを維持しようとしている幹部社員がとても多いように見受けられます。素直な心で物事を見、状況に応じて適切な価値判断ができ、属している人がみな自主独立した会社のように動く人材育成、組織形成を怠ってきた企業は、早晩表舞台から消え去ると私は思っています。事実かつて日本を支えてきた企業が次々と表舞台から消えています。効率性という名のもとに、人をなおざりにしてきた結果ではないかという気がするのは決して私だけではないでしょう。

スピードを要求する社会の中にあって、最も重要なのが組織のあり方、物事の決定、実践のあり方でしょう。そしてそれを支えるのは人以外にありません。繰り返しになりますが、自主独立した会社のように働く人を育てなければ、このスピードが強く要求される時代において、社会のお役に立つことはできないでしょう。何としても人を育てなければならないのです。自分の立場や先入観、偏見、一般的な経営論などにとらわれている余裕は寸暇もないと思います。

皆さんはいかがお考えでしょうか。

全国PHP友の会顧問 大江 弘

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